強制執行による差し押さえについて
差し押さえとは?どんな財産が対象になる?
強制執行による差し押さえとは、借金の返済が長期間(目安は3ヶ月)滞った場合、お金を貸した債権者が裁判所に申し立てを行い、お金を借りている債務者の財産を確保し、返済に充てる手続きのことです。
差し押さえの対象となる財産は、以下のとおりです。
- 給料
- 自動車
- 土地や家
- 銀行預金
たとえば、給与が差し押さえられた場合、手取りの給料から1/4ほどの金額が勤務先から債権者に支払われ、残りの3/4のみが銀行口座に振り込まれます。(手取り給料が44万円を超える場合は、33万円を超える分はすべて差し押さえられます)
このように、差し押さえを受けると生活費が強制的に減りますし、勤務先にも知られてしまいます。生活への影響が大きいので、なんとしても差し押さえは避けたいところです。
(現時点で、差し押さえされてしまっている場合は、「任意整理をすることで、すでに差し押さえられている財産の差し押さえは解除できる?」の章をご確認ください)
では、どのように差し押さえを回避したらよいでしょうか?実は、差し押さえは、事前に通知がくる仕組みになっています。
差し押さえになるタイミングは、どうやってわかる?

差し押さえの前には、以下2種類の通知がきます。
- 差押予告通知
差押予告通知は、債権者が債務者に送る通知で、「借金を一括返済しないと差し押さえをしますよ」という内容です。
目安としては3ヶ月以上、借金の返済を滞納すると、差押予告通知が送られます。この通知自体に法的な効力はなく、差し押さえの執行までは約1ヶ月~2ヶ月の猶予があります。
しかし、差押予告通知を放置してしまうと、債務者は早ければ1ヶ月以内に訴訟手続きをとる可能性があります。借金の一括返済が難しい場合には、弁護士などの専門家に相談しましょう。
- 支払督促
支払督促は、「特別送達」という債務者本人しか受け取れない形式で、裁判所から送られてきます。
裁判所が発行しているので法的な効力があり、差し押さえまでの期間も2週間とわずかです。そして、支払督促を受け取った後に、裁判所に異議申し立てを行わなければ、確実に財産が差し押さえられます。(異議申し立てをしても裁判になります)
支払督促が送られてきたら、すぐに弁護士などの専門家に相談しましょう。
任意整理によって給与や財産などが差し押さえられるケース
差押予告通知を受け取った後に、任意整理の手続きを始めたらどうなる?
差押予告通知を受け取ったタイミングで、弁護士や司法書士などの専門家に相談して任意整理の手続きを進め、債権者と和解できれば、長期的に借金の返済をすることになります。
返済を約束するため、基本的に財産が差し押さえられることはありません。
任意整理を理由に貸金業者が訴訟を起こすこともないので安心してください。
また、債務整理を弁護士や司法書士などの専門家に依頼すると、専門家は借入先に「受任通知」を送ります。
債務者が受任通知を受け取ると、法律に基づいて取り立てができなくなるので、電話や書類による督促も止まります。
しかし、実は任意整理をしても例外的に差し押さえを受ける場合があるんです・・・!
任意整理をしても、例外的に差し押さえを受けることはある?
任意整理をした場合、例外的に財産が差し押さえられるケースがあります。
その際、差し押さえられる可能性がある財産は、以下の4つです。
- 車
- 土地や家
- 銀行預金
- クレジットカードのリボ払いで購入した商品
次に、例外的に差し押さえを受けてしまう理由と対処法についてお話しします。
車を差し押さえられないためには、どうしたらいい?
自動車ローンは「所有権留保付ローン」であることが一般的です。
この契約では、返済が終わっていない車の所有権は債権者になるため、自動車ローンの支払いが滞ると車を差し押さえられてしまいます。
車を手元に残したい場合は、自動車ローンを任意整理の対象から外し、これまで通り返済を続ける必要があります。
土地や家を差し押さえられないためには、どうしたらいい?
住宅ローンを組んでいてローンが返済できなくなった場合は、債権者が土地や家を競売にかける可能性が高いです。
(競売とは、債権者が裁判所に申し立てをして、裁判所が土地や家を売却すること)
そのため、土地や家を手放したくない場合は、住宅ローンは任意整理の対象とせずに、支払いを続けるようにしましょう。
銀行口座を差し押さえられないためには、どうしたらいい?
銀行のカードローンなどを任意整理の対象にするときは、その銀行の普通預金口座を利用していないかを確認しましょう。
給料の振込先が任意整理するカードローンと同じ銀行である場合、銀行は、カードローンでの借金を同銀行の預金で補填するため、口座を凍結されてしまいます。
すると、お金の引き出しや引き落としができなくなります。
こうした事態を避けるためには、給与の振込先は他の銀行口座に変更しましょう。
クレジットカードで購入した商品を差し押さえられないためには、どうしたらいい?
クレジットカードの分割払いやリボ払いで購入して、返済が終わっていない商品は、没収される可能性があります。
すべての商品ではないですが、貴金属などの売却しやすく高値がつく商品は没収される可能性が高いでしょう。
こうした事態を避ける方法は、購入時に使用したクレジットカードを任意整理の対象から外すことです。
ここまで、任意整理したことで例外的に差し押さえられる可能性がある財産についてお話ししました。
では、すでに差し押さえを受けている人が、任意整理の手続きを行うと、どうなるのでしょうか?
任意整理をすることで、すでに差し押さえられている財産の差し押さえは解除できる?
結論からお伝えすると、給与や銀行口座などの財産をすでに差し押さえられている場合は、任意整理の手続きをしても差し押さえを解除できない可能性が高いです。
なぜなら、任意整理は裁判所を介さずに、債権者との直接交渉で借金の減額や支払い方法を合意する手続きであり、差し押さえを解除するか否かの判断は、債権者に委ねられるからです。
一方、任意整理ではなく個人再生や自己破産などは裁判所を介した手続きなので、給与や銀行口座の差し押さえを解除することができます。
任意整理と個人再生、自己破産の違いについては、「債務整理とは?あなたを借金から解放する4つの方法」で、くわしく紹介しています。