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差押予告通知から強制執行までの流れ
差し押さえ通知後すぐに実行される?
長期にわたって借金の返済を滞納していると、債権者から「差押予告通知」と呼ばれる書面が届きます。この書面には、「現在の借金残高を期日までに一括返済できなければ、財産を差し押さえる」といった旨が書かれています。
「差押予告通知」の発行後も返済に応じなければ、次のステップとして裁判所から「支払督促」が届きます。実際の差し押さえ実行までには、以下のスケジュールで進行していくことになります。
- 「差し押さえ予告通知」が届く
- 2週間~1ヶ月後、裁判所から「支払督促」が届く
- 約2週間後、裁判所の強制執行により差し押さえが実行される
裁判所から支払督促が届いたら、差し押さえの実行は目前です。ここまできたら迷っている時間はないでしょう。差し押さえが始まると、これを解除するのは容易ではありません。「まだ2週間あるから大丈夫」と思わず、「もう2週間しかない」と意識を改めて、手遅れの事態になるのを防ぎましょう。
脅しではなく本当に実行される?
厳密にいうと、この差し押さえ予告通知自体には、財産差し押さえの効力があるわけではありません。
しかし、債権者は単に脅すつもりで「差し押さえ」の可能性をちらつかせているのではないということを、しっかり理解しておきましょう。
差押予告通知を今までの督促と同様に放置すれば、早ければ1ヶ月後には裁判所の法的手続きが開始されます。
裁判所が下した決定ですので、覆すことはできません。
開始されると債権者はすぐにでもあなたの財産の差し押さえを実行するでしょう。債権者はお金のプロです。あなたが財産を隠そうとしても容易に見つけます。
つまり、この通知が届いた段階で、予断を許さない状況にまで追い詰められているのは間違いありません。一刻も早く対策を講じなければ、あっという間に財産を差し押さえられてしまうでしょう。
強制執行による差し押さえの恐ろしさ
差し押さえが確定するとどうなる?
強制執行による差し押さえとは、裁判所の効力で、あなたから強制的に財産を取り上げてしまうことです。
「差し押さえ」と聞くと、高価な財産である家や車、宝石などが回収されてしまうイメージがあるかもしれません。
確かにそれらも差し押さえの対象となるケースはありますが、それよりも優先して差し押さえられるのは、給与や預貯金などの現金です。
- 給与
給与に関しては、原則として手取り額の4分の1までが対象となりますが、手取り額が44万円を超える場合には、33万円を超えた金額をすべて差し押さえられる可能性があります。
借金生活に苦しんでいる方にとって、現金の差し押さえはかなりの痛手となるでしょう。
- 預金口座
銀行口座が差し押さえられると、強制的に口座内の預金は没収されてしまいます。ただし没収された後に入金した預金は差し押さえられることはありませんが、債権者が裁判所に再度申立をすれば、請求額に届くまで差し押さえは可能になります。
- 自宅や車などの財産
優先順位は低いものの、給与や預金口座を差し押さえて換金しても請求額に達しない場合は、自宅や車なども差し押さえられる可能性があります。
家電や衣類など生活に最低限必要なものについては、差し押さえの対象とはなりません。
いい換えれば、差し押さえが実行されると生活に必要な最低限のものしか残せないということです。
財産以外に失うものは?
給与が差し押さえられる場合、裁判所から直接勤務先に通告され、取り立てがおこなわれます。そのため、勤務先に「借金を抱えていること」「借金の返済を滞納していること」がバレてしまうのは免れません。
その結果、社会的信用を失ったことで会社にいづらくなり、退職せざるを得なくなるリスクも高まります。貴重な収入源である仕事を失うことは、今後の生活を大きく揺るがすものです。
なによりも財産を失い、最低限の生活水準に転落してしまうことで、大切な家族からの信頼も失ってしまう恐れがあります。
配偶者や親、子どもなど大切な人から信頼を失うと、家庭崩壊につながりますし、その心理的ダメージは一生消えることはないでしょう。
財産だけでなく仕事や家族も失う、最悪の事態に陥ってしまわないよう、借金問題は早期解決するに越したことはありません。
具体的な解決方法については、次の章でくわしく解説します。
差し押さえ通知が届いてしまったら…強制執行を防ぐ唯一の方法
前述の通り、差し押さえを予告する通知が届いたら、あまり残された時間はありません。
この段階でも金融業者に交渉したり、裁判所に異議を申し立てたりすることは可能ですが、効果はほとんどないものと考えてください。
ギリギリの瀬戸際で強制執行による差し押さえを防ぐには、「債務整理」という手続きがもっとも有効であり、残された唯一の手段です。ここでは債務整理をすると、どんなメリットが得られるかをご説明しましょう。
債務整理とは?
債務整理とは、弁護士や司法書士などの専門家に依頼して、返済できない借金の負担を軽減するための手続きを行うことです。
具体的には「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3つがあり、個人の状況に応じて適切な方法は異なります。それぞれの特徴とメリットとデメリットは以下を参照してください。
任意整理 | 貸金業者などの債権者と直接交渉して「返済期間の延長」や「利息カット」月々の返済額を軽くする手続き。裁判所を介さず自由な交渉が可能なため、デメリットも少ない。 |
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個人再生 | 裁判所の許可を得て、借金残高を原則5分の1に減額する手続き。自宅など財産は失わないが、安定した収入が必要。 |
自己破産 | 裁判所の許可を得てすべての借金をゼロにする手続き。財産を失う、職業に制限がかかるなどデメリットも大きい。 |
メリット | デメリット | |
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任意整理 |
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個人再生 |
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自己破産 |
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債務整理のどの手段を選択したとしても、“ブラックリスト入り”というデメリットは付きものです。
しかし、すでに返済を滞納した時点で個人信用情報に事故情報として記録されているため、債務整理によって大きく状況が変わるというわけではありません。
それよりも債務整理で得られるメリットのほうが、今後の生活にとって大きな意義を持つことは間違いないでしょう。
また、ご自身が債務整理のどの手段を選択すべきかは、借金問題の解決実績が豊富な弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。
まずは法律相談所の無料相談を利用して、専門的な立場からアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。
債務整理の依頼を専門家にすると裁判や差し押さえを回避できる
差し押さえ予告通知や支払督促を受け取った時点であれば、債務整理の手続きを弁護士や司法書士に依頼すると、差し押さえや返済をストップすることができます。
給与がすでに差し押さえられてしまった場合も、「個人再生」「自己破産」であれば、以後の差し押さえをストップすることが可能です。
しかし、すでに差し押さえられてしまった給与や貯金、財産については戻ってきません。
任意整理では給与の差し押さえは止められない?
債務整理のうち、「任意整理」では強制執行による給与の差し押さえを停止することはできません。
これは任意整理が裁判所を介した法的な手続きではなく、あくまで弁護士が債権者に対して、借金の返済条件を緩和してもらえるように交渉する手段だからです。
つまり、すでに給与が差し押さえられた段階では、任意整理は有効ではないといえるでしょう。基本的には「個人再生」または「自己破産」を選択するしかありません。
任意整理は債務整理のなかでももっともデメリットが少ない手段ですが、だからこそ差し押さえにまで至ってしまったような状況では、そもそも選択肢として残されていないということになります。
このように滞納から時間が経てば経つほど、必然的に対処法の選択肢は限られていきます。借金問題は早めに手を打つことが重要なのです。