目次
任意整理とは
任意整理とは、借入先の金融機関と交渉して借金を無理なく返済できるようにする手続きです。
具体的には
- 将来利息をカットする
- 返済期間を3~5年で完済できるようにする
- 月々の返済額を見直す
- 借金を正しい金利で計算し、過払い金が発生していれば減額する
以上のようなことで、月々の返済の負担を軽くしながらも、最終的には自分の力で借金を完済していきます。
「自己破産」「個人再生」と同じ債務整理の一種ですが、裁判所を通さないため、デメリットや生活への影響がもっとも少ない手続きといえるでしょう。
そのため、債務整理をするほとんどの人が任意整理を選択しています。
債務整理の利用者人数(平成27年) | |
---|---|
任意整理 | 不明(推定200万人以上) |
個人再生 | 7,798人 |
自己破産 | 64,081人 |
出典:裁判所司法統計より ※自己破産は個人の利用件数で法人は含まれていません
任意整理のメリット・デメリット
借金解決の方法として、すべての人に任意整理が有効とは限りません。まずは手続きする前に、任意整理のメリットとデメリットを比較してみましょう。
【メリット】
- 利息がカットされ、元金のみを返済する
- 過払い金が発生していれば元金も減らせる
- 督促や取り立てがなくなる
- 毎月の返済額が減る
- 借金完済のゴールが見え、将来への不安が軽減される
- 任意整理したい借入先を選べる
【デメリット】
- ブラックリストに載り、クレジットカードやローンの利用ができなくなる
「借金の返済が苦しい」「いつ完済できるかわからず、先が見えない」理由は、利息の存在です。
任意整理の手続きでは、まずその利息をカットして元金のみの返済とします。その結果、返済総額は確実に減りますし、毎月の返済額も軽減されます。さらに手続き後は元金のみの返済になるため、支払った額だけ借金残高が減る点も大きなメリットです。
ほかにも特定の借入先にだけ任意整理を申し込みできるという特徴もあります。そのため「A社の借金は減額したいけど、車は使い続けたいからB社のローンは返し続けたい」といった場合、B社は任意整理をしないという選択も可能なのです。
注意しておくべきは、任意整理をすると約5年間、信用情報機関に記録が残ることです。いわゆるブラックリストに入りするのことで(個人再生・自己破産は約10年)、期間中はクレジットカードを作ったり、住宅ローンやキャッシングの利用ができなくなります。
任意整理と自己破産・個人再生の違い
任意整理とほかの債務整理の違いについてまとめました。
任意整理 | 個人再生 | 自己破産 | |
---|---|---|---|
借金の減額度 | ★★☆☆☆ 原則、利息のみ |
★★★★☆ 1/5程度まで減額 |
★★★★★ 全額免除される |
手続きの難易度 | ★★☆☆☆ 専門家に依頼すれば手続きはそれほど必要ない |
★★★★☆ 書類作成や裁判所への出廷などが必要 |
★★★★☆ 書類作成や裁判所への出廷などが必要 |
デメリットの多さ | ★☆☆☆☆ ブラックリストに載る |
★★★☆☆ ブラックリストに載る 官報に掲載される 債権者を選べない (住宅以外の)ローン支払い中の財産は失う |
★★★★☆ ブラックリストに載る 官報に掲載される 債権者を選べない 家や車などの財産を失う 職業や資格に制限がかかる |
手続き期間 | ★☆☆☆☆ 約1~3ヶ月 |
★★★★☆ 6~12ヶ月 |
★★★☆☆ 3~6ヶ月 |
手続きにかかる費用 | ★☆☆☆☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
保証人 | ★☆☆☆☆ 任意整理の対象から外した債務については影響なし |
★★★★★ 返済義務が移る |
★★★★★ 返済義務が移る |
バレる危険性 | ★☆☆☆☆ (債権者1人につき) |
★★☆☆☆ 基本バレない |
★★☆☆☆ 基本バレない |
※債権者=請求する権利をもつ人。つまり消費者金融や銀行など借入先の金融機関のこと
どの債務整理を選択するかは、収入と借金の状況によって決まります。
任意整理とほかの債務整理のもっとも大きな違いは「裁判所を介さない」ことです。
そのため任意整理は原則、将来利息のカットによる減額しか望めませんが、「個人再生」や「自己破産」は裁判所の効力のおかげで大幅な減額やすべての借金を免除することが可能です。
借金額を減らすのであれば「個人再生」や「自己破産」の方が有効かもしれません。ただし減額幅が大きいほど、デメリットや生活への影響も大きくなります。
したがって債務整理を考える時は
- まずは任意整理
- 次に個人再生
- それでもダメなら自己破産
といった順に考えましょう。
任意整理とほかの債務整理の違いについては「債務整理で借金の悩みを解決!メリットやデメリットをわかりやすく解説」でさらに詳しく紹介しています。
任意整理、その後の生活はどうなる?
ここからは任意整理後、返済や生活にどのような影響があるのかについて解説します。
手続き後の返済
任意整理をした後は決定した返済計画に基づいて、原則3年間の分割払いで毎月の返済を行います。返済方法は以下の2つのうちどちらかを選択します。
- 自分で各業者に振込送金をする
- 弁護士・司法書士を通して各業者に送金してもらう
弁護士や司法書士を通して送金すると、1,000円程度の手数料がかかります。しかし任意整理後は、できるなら金融機関とのやりとりは避けたいもの。金融機関とのやりとりが心理的負担になるのであれば利用してみてはいかがでしょうか。
生活への影響
任意整理のデメリットはブラックリストに載ることです。それにより以下のような影響が考えられます。
任意整理にかかわらず、どの債務整理を選択したとしても「ブラックリスト状態」になります。任意整理の場合は約5年間で解除されますが、その間、以下のようなことができなくなります。
- クレジットカードや住宅ローンが利用できなくなる
- カードローンやキャッシングが利用できない
- 携帯電話やスマホ購入する際、分割払いができない
- まれに賃貸住宅の入居審査に通らないケースがある
ブラックリストは5年で解除されますので、生涯クレジットカードが使えないわけではありません。また任意整理にありがちな勘違いとして「生命保険に通らなくなる?」「財産が没収される?」などがありますが、まったくのデタラメです。
クレジットカードやローン、キャッシングが利用できないのは不自由ですが、現金や収入の範囲で生活する習慣を身につける機会と捉えてみてはいかがでしょうか。
ブラックリスト期間の注意点や対処法については「債務整理するとブラックリストに何年載る?期間中の対処法5つ」で紹介しています。
クレジットカードをブラックリスト期間中に作るには?
ブラックリスト状態でクレジットカードを作るのは原則、不可能です。ただしキャッシュレスでの支払い方法はいくつかあります。
・デビットカード
購入時に銀行口座から引き落とされるため、口座があれば審査不要。見た目も変わらない。
・プリペイドカード
事前に入金するため、審査は不要。見た目も変わらない。
・家族カード
家族内の別の人が本会員であれば可能。
・「LINE Pay」「PayPay」などスマホ決済
プリペイド式や銀行口座からの引き落としが可能。審査もない。
住宅ローンをブラックリスト期間中に組むには?
ブラックリストから消去されるまで5年間待つのが原則です。ただしブラックリストの影響は本人以外には及びません。
したがって、夫が任意整理したとしても妻の名義であればローンの申し込みは可能です。
任意整理後の生活への影響や注意点については「任意整理後の生活が心配…クレジットカードやローンへなど7つの影響」でさらに詳しく解説しています。
任意整理でどれくらい借金が減るのか?その後の生活は?経験者に聞いてみた
Aさんの場合 (年齢・性別:40代/男性)
減らなかった借金が減るようになりました!
130万円
→
95万円
10万円
→
6万円
Bさんの場合 (年齢・性別:50代/男性)
借金返済の目途が立ちました
債務整理後、借金を返済していく目途がたったことで気持ちが前向きになりました。たしかに生活は大変ですが、それでも借金がこれ以上膨らんでいくという恐怖におびえることがなくなりました。
300万円
→
200万円
5万円
→
3.5万円
Cさんの場合 (年齢・性別:40代/男性)
返済額が350万円も減りました!
ダメ元で弁護士さんに依頼したのですが、返済額が圧倒的に減りました。頑張って返済することはもちろん大切ですが、苦しくなってどうしようもなくなるまで我慢する必要はありません。スマホひとつで任意整理ができる弁護士事務所はすぐに探せます。
600万円
→
250万円
8万円
→
2万円
Dさんの場合 (年齢・性別:30代/女性)
浪費を見直すキッカケに
5年という期限はあるのですが、毎月ちゃんと支払えば完済という目標ができたのでとても安心できました。クレジットカードが使えないのは不便ですが、浪費ばかりしていた生活を見直すきっかけにはなったと思います。
300万円
→
150万円
10万円
→
3万円
誰でも可能?任意整理ができる条件
任意整理は、借入先の金融機関などと交渉して借金の返済額や返済方法を決めていく手続きです。そのため借金の理由や借金額が問われることはありませんが、債権者が任意整理に応じてくれるには、一定の条件があります。
1.原則3年~5年以内に元金を完済できるだけの支払い能力
詳細を見る
任意整理は借金の返済の負担は軽くしても、返済自体は継続し、減額した後の残金は必ず返済する必要があります。したがって無収入や生活保護の人は任意整理できない場合があります。
ただし定職にはついていなくても、1年程度勤務していて収入が安定していれば可能ですし、専業主婦や学生でも夫や親の収入が安定していれば任意整理は可能です。
2.返済の意思がある
詳細を見る 過払い金が発生していない限り、任意整理で借金の元金の減額はそれほど望めません。債権者から同意を得るためにも、手続き後の残高はすべて支払う姿勢をはっきり示す必要があります。
3.金融機関などからの借金である
詳細を見る
銀行や消費者金融、クレジットカード会社などから「借金をした」のであれば、任意整理の交渉は可能です。しかし税金や罰金といった「借りたお金」ではないものについては任意整理はできません。
任意整理ができない場合については「任意整理ができない場合もある?知っておくべき3つのケースと対処法」で詳しく紹介しています。
任意整理すべき人に当てはまる6つのポイント
ここまで「任意整理がどのようなものなのか」について、お話ししてきました。これらの特徴を踏まえて、任意整理が有効な人を挙げるとすれば、以下に当てはまる人です。
- 借金総額が年収の1/3を超えている
- 借金をしていることを家族にバレたくない
- 毎月の返済が滞りがち
- 返済していても借金残高が減らない
- 数社から借り入れしている
- 仕事で忙しいので手間をかけたくない
これらにひとつでも当てはまる状態であれば、当面の返済はしのげても完済には至らないケースがほとんどです。そればかりか返済が苦しい生活をズルズルと続けていると、自己破産をする以外に選択肢がない状況に陥ってしまいます。
生活への影響を最小限に抑えるためにも、まずは弁護士・司法書士に相談してみましょう。
任意整理の手続き方法
ここからは任意整理手続きの流れや期間、費用、必要書類について解説します。
弁護士・司法書士に任意整理の相談をしてから、借入先と合意をするまでの流れは以下のとおりになります。

任意整理にかかる期間は?
和解までにかかる期間はおよそ3ヶ月です。ただし、直接交渉ゆえに「金融機関が交渉に応じてくれない」「利息カットを頑なに拒否する」などの事情で長引くケースもあります。
3ヶ月といっても、弁護士や司法書士に任意整理手続きの依頼をした時点で借入先の金融機関からの督促は止まります。そのため「督促の電話が鳴り続ける」「一括請求されていて猶予がない」状態でも手続きは可能です。
任意整理に必要な書類は?
任意整理の手続きをする際に必要な書類は、大きく以下の6つです。
書類名 | 取得方法など |
---|---|
クレジットカードやキャッシュカード | 手元にあるもの |
印鑑 | |
預貯金通帳 | |
住民票 | 市町村役場の窓口で取得 |
給料明細・源泉徴収票 | 源泉徴収票は会社の給与担当者(経理係など)に問い合わせれば取得可能 |
債権者一覧表 | 借り入れをしている業者がわかれば、弁護士や司法書士が作成 |
個人再生や自己破産は裁判所を介した手続きになるため、用意する書類はさらに多くなります。
任意整理の流れや手続き方法については「任意整理の手続き方法と必要な期間や費用・書類などまとめ」で詳しく紹介しています。
任意整理にかかる費用
任意整理の費用は、主に弁護士や司法書士への報酬です。法律事務所によって異なりますが、下記が相場とされています。
費用名 | 金額 |
---|---|
相談料 | 0円~1万円 |
着手金 | 債権者1社あたり0~3万円 |
基本報酬 | 債権者1社あたり3~5万円 |
過払い成功報酬 | 戻った分の20% |
「お金に困って任意整理を検討しているのに、何万円という金額は払えない」ように思えますが、
- 相談料は無料
- 分割払いが可能
としている法律事務所もあります。
また任意整理の手続きを依頼してから完了するまでの間は借入先への支払いをストップできるなど、無理なく支払える方法があります。無料相談などを活用し、費用の支払い方法については無理なく支払えるようしっかり相談しておくことがポイントです。
任意整理にかかる費用については「任意整理の費用は?今お金がなくても大丈夫!支払い方法4つ」で詳しく紹介しています。
任意整理を依頼する弁護士を選ぶポイントについては「任意整理の弁護士選びは費用以外も大事!選ぶポイント5つと注意点」で詳しく紹介しています。
任意整理Q&A
最後に任意整理についてよくある疑問に、お答えします。
Q1弁護士や司法書士に依頼しなくても任意整理の手続きは可能?
A:費用をかけずにすませるのであれば、自分一人で手続きをすることもは可能です。しかし以下のような理由から自分ひとりで手続きする人はほとんどいません。
- 交渉が難航する
- 手続き中も取り立てが続く
- そもそも借入先の金融機関が取り合ってくれない
Q2任意整理後にまとまったお金が入り、一括返済したいのですが可能ですか?
A:任意整理後の借金を一括返済や繰り上げ返済することは可能です。その場合、再度交渉して減額できる可能性もあります。
ただし、一括で返済したからといって、ブラックリストから消えるわけではありませんので注意してください。
Q3任意整理後にまたお金がなくなり、消費者金融などからお金を借りたいのですが…
A:任意整理をするとブラックリストに載るため、基本的には金融機関からお金を借りることはできません。
借りられる業者があるとしても、多くがヤミ金融です。
その場合は、再度任意整理をして月々の返済を減らすか、自己破産で借金をゼロにする方法などが考えられます。
Q4結婚を考えているのですが、任意整理をすると結婚に影響するのでしょうか?
A:任意整理をした事実は、戸籍や住民票に記載されませんので、相手に知られることはありません。
Q5借入先から差し押さえ通知が届きました!任意整理すると解除できますか?
A:任意整理後であれば、債権者は差し押さえることはできません。
差し押さえ通知が届いただけで実際に執行されていなければ、すぐにでも弁護士に相談し、任意整理を進めましょう。
すでに給料などが差し押さえられている場合は、残念ながら任意整理で解除できません。
その場合は個人再生か自己破産を検討する必要があります。
任意整理と差し押さえについてはこちらの記事でさらに詳しく紹介しています。
Q6任意整理するとアパートや賃貸住宅を追い出されることはありませんか?
A:ありません。
しかし滞納した家賃を任意整理する場合は、立ち退き請求をされる可能性があります。対処法としては家賃を任意整理の対象から外しておくことです。
Q7任意整理して返済期間を3年にしたのですが、さらに期間延長できますか?
A:返済を始めた後に収入が減ったなどの理由で返済が苦しくなった場合、再び債権者と和解契約を結び直すことで返済期間を延長することができます。
Q8任意整理は何度でもできますか?
A:任意整理には回数制限はありません。任意整理後に状況が変わり、再び借金に悩んでいるであれば、もう一度任意整理しましょう。
また返済期間を延長して月々の支払額を安くすることも可能です。
Q9任意整理したのですが、銀行口座は開設できますか?
A:可能です。任意整理したからといって銀行が口座開設を拒否することはありませんので安心してください。
Q10銀行のカードローンを任意整理すると、同じ銀行口座はどうなりますか?
A:残念ながら、その場合は銀行口座が凍結され、出金ができなくなります。そのため、専門家に依頼する前に銀行からお金をおろしておきましょう。
月々の支払いが10万ほどから任意整理後は6万くらいに減り、生活がラクになりました。その上、利息はカットしたので今は元金が支払った分減っていきます。減らなかった借金がみるみる減るのをみるとうれしくなります。